サジェスト機能で提訴・判決という記事に思う

 google検索で自分の氏名とともに否定的な言葉がサジェスト機能で表示され、犯罪に関与したかのような中傷記事が出るのは名誉毀損として、googleを提訴した人がいるらしい。東京地裁は原告の訴えを認め表示差し止めなどを命じたという。

 一般的にいえば、犯罪に一切関与していないにもかかわらず関与したかのように扱われるのならば問題だろう。過去にも、ネットで「凶悪事件に関与した」かのように書かれたタレントが事実無根として書き込み者を訴えた例があった。

 今回の事例、新聞記事では差し障りのないことしか書いておらず、さっと読み流せば原告は事実無根の中傷を受けていると取れる。

 一方でネットでは、過去に「大学生時代、組織的な強姦犯罪を起こした学生団体に所属していた」とネット上で指摘された者が、「その団体に所属していたのは事実だが、犯罪に関わっていない」として書き込んだ者の情報開示を求める訴訟を起こしたという新聞記事の存在が指摘されている。
 また、ネット上の無料弁護士相談サイトで、これと同じ団体の関係者と思われる「組織的な強姦で問題になった団体で幹部だった。自分は摘発を逃れたが、立件されなかった犯罪行為には関わっていた。ネット上には自分がその団体に所属していたと指摘する書き込みがあり不利益を受けている。消させたいし書き込んだ人物を黙らせたい。損害賠償をとりたい」と相談している書き込みがあったと指摘している内容もある。弁護士サイトでは「明らかに無理筋。やめておけ」といわんばかりの回答だったが。

 今回の原告は、上記の昔の新聞記事やネットの人物と同一人物ではないかとする指摘も、ネットではされている。

 今回の原告が、これと同一なのかは、情報が少ないのでここでは断定できない。

 以下は、原告個人という話ではなく、原告個人とは全く無関係のあくまで一般論ということをお断りしたい。

 凶悪な行為を犯したにもかかわらずたまたま刑事罰を逃れただけという者が、事件への反省もなく、まるで最初から凶悪な行為そのものが存在しなかったかのように「冤罪被害者」面する者もいる。そういう者が、事件を報じたニュース記事や、ニュース記事をまとめて報道内容を整理したり感想を書いただけのブログなどに対して、単に自分にとって気に入らないことや不都合なことが書かれていたからといって「自分への人権侵害」などと難癖をつけて、言論封殺レベルの嫌がらせをする例も報告されている。

 どうみても問題がないはずなのに、ブログで事件事故の報道の感想を書いただけで何者かが「中傷」などと一方的に難癖をつけたためにプロバイダから記事をむりやり消されたとする訴えも、ネット上でいくつか見たことがある。

 一般的には人権は尊重されなければいけない。しかし人権概念を都合の良いようにゆがめ、自分が起こした事件への反省も被害者への名誉回復・被害回復の姿勢も見せず、加害者である自分は傍若無人に振る舞う権利があり、自分にとって少しでも気に入らない主張は「マスコミによる報道被害」「インターネット上の中傷」などと人権侵害呼ばわりし、目をつけた相手を恫喝して言論弾圧しても意に介さないとばかりの主張には、強い違和感を感じている。

 いわゆる告発サイトだけでなく、刑事事件・少年犯罪・交通事故・子どもの事故・いじめなど各ジャンルの事件事故データベースサイトのようなものも存在するが、事件事故の経過を淡々と記録しただけでも加害者側の関係者によって理由なく「誹謗中傷」とか「名誉毀損」とかいわれたら、サイト作成者の権利の侵害になってしまう。またその分野での事件事故再発防止や教訓化も、事実そのものが抹殺されることで困難になるだろう。

 事実無根なのに犯罪に関与されたかのように書かれたのならば被害を回復されるべきだが、その一方で今回の判決は、本当の意味での中傷被害者とは対極の、公益性のある事実にもかかわらず「自分にとって都合が悪いから事実そのものを抹殺する」とばかりに振る舞う自称「冤罪被害者」から悪用される恐れもあるのではないかと危惧している。本当に困っている人の名誉回復と、悪意をもって不都合な記事を抹殺しようとする言論弾圧への悪用防止とを、両立させなければならないだろう。