鉄道の安全性軽視としか思えない:小池都知事ブレーンの「満員電車ゼロ」方策

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東洋経済オンラインに『都知事公約「満員電車ゼロ」は、こう実現する 小池新知事のブレーンが5つの方策を提示』(2016年8月6日配信)が掲載されています。

小池百合子都知事が選挙で「満員電車ゼロ」を訴えて鉄道輸送力増強と混雑緩和を訴えました。

これに関連して、東洋経済オンラインが小池都知事のブレーンにインタビューし、具体的な方策を聞いています。中身は現実からはかけ離れた思いつきに近いもので、しかも安全対策軽視。

小池氏は選挙中「2階建て車両導入」を主張しました。これに対しては利用者や鉄道ファンから、東海道本線東京口の快速「アクティー」で一時期全2階建て車両(JR東日本215系)を導入して失敗した例をあげ、ドアの数が減ることやドア付近に人がたまることなどで混雑や遅延がひどくなったなどとツッコミが入りました。

観光列車や長距離列車ならともかく、通勤列車で2階建ては愚策です。関西だと京阪特急。2階建ての特急車両(8000系。8両編成の中間車1両がダブルデッカー=2階建て)は心惹かれるもので、個人的にも特急に乗る時は2階建て車両の2階席を優先的に狙いますが、京都市内(七条)~大阪市内(京橋)間無停車の時代はともかく、特急が途中駅にこまめに停車するようになると弊害も出て、近年では半分が通常の1階建ての車両での運行となっています。

記事では2階建て車両に対して「アクティーのような車両ではなく、1階・2階にそれぞれ出口を作る。ホームも2階建てにする」と反論。費用的にも駅の構造的にもかなり無理があります。

何よりも見過ごせないのは、安全対策を軽視しているとみられてもしかたがないような主張。「青信号と同時に車両を発進させる」「車両のドアが閉まったことを運転席に知らせるパイロットランプの点灯と同時に出発」ことを主張しています。これは極めて危険です。前者については赤信号見落としなどによる誤出発によって衝突事故につながる危険を避けるために、また後者についてはドア挟みによって乗客が引きずられるなどする事故を避けるために、慎重に安全確認をおこなってから出発するしくみになっています。

これらを無駄な規制かのように言い立てていますが、しかしこれらの規定は過去の事故の教訓から生み出された、事故防止のための回避システムです。無駄ではありません。

またこのインタビューでは、機械での安全確認の精度を上げれば代替案になるとしています。しかし機械の精度と同時に、人的なチェックも同時にしなければなりません。安全に関わることであり、セーフティネットは何重にもとられなければなりません。

さらにインタビューでは、加減速の強力化や、信号システムの改良で車間距離を詰められるようにすることなども提言。技術的には加減速を自動車並みに強力にすることもできるでしょうが、高速バスや飛行機のように全員着席などとなってしまうでしょう。レールや車輪の痛みも早くなります。また車間距離を詰めたり目測で運転することで事故につながった例もあり、信号システムの改良自体は必要に応じてすべきでも、単純には同意できません。

現状の満員電車・通勤ラッシュの大混雑については、早急に対策がとられるべきもので、今のままでいいというわけではありません。しかし改善については、乗客や乗務員の安全確保、事故を未然に防止するという視点をしっかりと見据えながらおこなっていく必要があります。混雑緩和のために安全対策を軽視しても仕方がないかのような考え方には同意できません。

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