住吉市民病院、閉鎖後「医療空白」不可避か

大阪維新の会が「大阪都構想」と絡めて強硬に進めた住吉市民病院の廃止問題では、2017年3月に新たな局面を迎えた。

市民病院閉鎖後「空白」避けられず

毎日放送 2017年3月27日

来年4月での閉鎖が決まっている大阪市立住吉市民病院。跡地には民間の医療機関が新しい病院を建てる予定だったんですが、建設計画のミスで2年の空白期間ができることになってしまいました。そこで市は、とりあえず2年間、今の市民病院の建物で病院を運営してもらおうと民間病院に補助金を出そうとしたのですが、補助金が27日の市議会で認められないことになりました。2年間の空白が避けられないばかりか、民間病院が計画そのものから撤退してしまう恐れも出てきているといいます。

この問題の経緯は、住吉市民病院の建物の老朽化で建て替えを検討した際、「建て替えにあわせて、産科小児科の医療に特化した病院として改編する」という構想が打ち出され、議会でも同意していた。高度医療も当然必要だが同時に総合病院としての診療科も残すのが望ましいのではないかという意見もあったものの、最終的にはその意見を述べた会派も同意する形になった。

しかし橋下徹が市長になり、従来の構想はひっくり返されることになった。

橋下は「大阪都構想」と無理やり結びつけ、約2キロ離れた場所に立地する大阪府立急性期総合医療センターと住吉市民病院があるのは二重行政と難癖をつけて、両病院を統廃合して産科小児科の高度医療の病院に特化しようとした。

しかし両病院とも現状の受け入れ体制は飽和状態に近く、そこに物理的に受入数が減ることになることにもなり、余計に受け入れ体制が狭まることになる。また住吉市民病院では地域の病院であると同時に、社会的に困難な状況に置かれた妊婦や新生児を積極的に受け入れている。統合で従来の機能が十分に発揮できなくなるのではという疑念がわく。

維新は廃止にこだわり続ける一方で、地域からは病院存続を求める声が上がった。結果的に大阪市会では「跡地に民間病院誘致」の附帯決議をつけた上で統廃合を認めることになった。

しかし民間病院誘致は2度にわたって失敗した。3度目に手を上げた南港病院は、「現病院の北側敷地に病棟を建てることにしたが、日照規制に引っかかることがわかった」と。それを大阪市は把握していながら隠していたことも明らかになった。

病院の改廃には、設置者の意向での届け出だけではなく、都道府県知事の諮問機関である医療審議会での審議を経て国に承認を求める必要がある。大阪府医療審議会でも疑問の声が強く出されたもかかわらず、松井一郎大阪府知事が押し切った形になった。

医療審議会での経過は、問題になっている「森友学園問題」で、大阪府知事の諮問機関の大阪府私学審議会が、委員から新設小学校計画への疑問が噴出しながらも大阪府の事務方の主導で「認可適当答申」をまとめたような経過とも似ているようにも感じる。

また大阪市は南港病院に対して、今の建物を改修して診療に当たってもらうための補助金を出すことを検討したが、それには議会から難色を示された。

さらには、南港病院が撤退を検討していることもささやかれている。

維新の議員や狂信的な信者は、予算を認めなかった野党のせいと一方的に責任転嫁を図っている様子である。しかしそんなものは事実に反する。

「大阪都構想」によって大阪府立・市立の同種施設に何でもかんでも「二重行政」と難癖をつける、「民間でできることは民間に」という公共性放棄と過剰な民間信仰、それに伴う補助金などの利権――そういう維新のネオリベ的な信仰、住民生活軽視が、最悪の形で現れたもののひとつだといえる。

しかも新生児・周産期医療の病院。ことは命にも関わるような重大なものである。周産期医療は困難でハイリスクな部分も多く、民間病院でも撤退気味であることから、公立としてしっかりと公共性をもって整備していくことも重要になってくるのではないか。

しかしそれを軽視し、自分たちの思い込みこそが絶対とばかりに、その場限りの適当なことを言い立てて構想を強引に進めようとし、疑問の声には耳を貸さない。最終的には疑問が出されたとおりにぐちゃぐちゃにされるだけで大失敗。とんでもないことではないか。