西成特区構想の継続:特区という発想自体が疑問

2012年に提起された西成特区構想について、吉村洋文大阪市長は2017年8月30日、一定の成果が現れたとしてさらに5年間引き続いて取り組むと発表した。

西成特区構想なるもののは、当時の大阪市長・橋下徹が提起したものである。

当ブログ筆者は、2012年当時から問題を危惧していた。2012年10月15日付エントリ「西成特区構想には期待できない」。

大阪市が検討している西成特区構想について、報告書が2012年10月13日に発表された。目を通してみたが、内容は全く期待できない。 問題...

このエントリでは、おおむね以下の点について指摘し危惧していた。

  • 特区の範囲が曖昧。「あいりん地域の否定的な現象」と「西成区全域、またあいりんと地理的に重なる地域も含めて西成区であいりんとは無関係に生活する住民」を同一視している。
  • 通常の特区は、経済特区や教育特区など、特定の分野の課題に限定して対応するものだが、行政区ごと特殊地域認定している。
  • 「西成区」を特殊地域呼ばわりすることで風評被害が強まる。西成(区)の地名におかしな意味を持たせて、特殊地域扱いされること自体が重大な風評被害で、今までも一部のあいりん支援者やマスコミによってそういう風評を振りまかれてきたが、その風評・偏見が強まる恐れ。
  • 西成特区構想自体、「大阪都構想」に関連して、生活保護などの「お荷物」を押しつけるための方策。
  • 西成区の住民にとっては何のメリットもない。当時から大阪市は、西成区や周辺区も含めて子育て環境や医療環境を悪化させようとする取り組みをおこなっていた。

そのブログエントリから5年、残念ながら当時の危惧は当たった。いや、むしろ当時の危惧以上のことが起こったことになった。

2012年の時点で、西成区の住民からは、西成特区構想という発想に批判的な声が出ていた。

大阪都構想をめぐる動きの中で、維新が西成区を「お荷物地域」扱いして風評被害を振りまき、地域差別的なヘイトを振りまいた。

ツイッターでこんなツイートが流れているのを見つけた。 都構想賛成の宣伝カーが「西成の名前を消す最後のチャンスです!」と連呼。「名前」が...
維新の会は西成区内で、西成区の区名を消して中央区にするのが「都構想」という宣伝をおこなっているとか。 西成区内で「都構想」賛成の宣伝カ...
大阪維新の会が西成区で「西成の地名をなくす」と書いたビラを発行し、ネットでは「地域差別」などと批判が巻き起こっている。 情報を総合する...

2015年5月17日の大阪市廃止・解体の住民投票では「都構想」は免れたものの、それ以降も、「都構想」反対の急先鋒の柳本顕大阪市議が西成区選出だったことも加わり、維新は西成区への地域差別的なヘイトを繰り返した。

イドマサこと大阪市議・井戸正利が、大阪市長選挙に関連して異常な人格攻撃や地域ヘイト発言を繰り返している。 2015年9月23日。 ...
大阪W選挙に向けて維新の会が10月18日に西成区周辺で宣伝したことに連動してか、10月18日から19日にかけて維新関係者が一斉に西成区ヘイト...
奇妙なツイートを見つけた。ツイートをさかのぼると、大阪維新の熱狂的な支援者の様子。 あいりん地区の通学路の外灯設置やゴミ収集時間の前倒...

挙げ句の果てには橋下徹は、あいりんといわれる地域と地理的に重なる中心となる場所の、地元の人は萩之茶屋(はぎのちゃや)地域と呼ぶ地名および小学校名が読めず、「おぎのちゃや」と連呼する傑作ネタも。

ツイッターで妙な内容のツイートが流れてきた。 柳本さんの門前までわざわざやってきて仕掛けた街頭演説で橋下さんが「萩之茶屋」を「おぎのち...

映像は維新信者の側が作ったもので、タイトルもおかしなデマが入っているが、動画の16分16秒頃に「おぎのちゃや」発言が飛び出している。

維新は地域差別的な「西成特区構想」を打ち出すことで何をしたか。「今までの行政は西成(あいりん地域周辺だけの意味。この意味で「西成」と使う事自体が重大な無理解ですが)に対して何もしなかった」と言い立て、ひどいのになると「この地域を地盤にしている柳本一家があいりん地域のおかしな現象を作った」という悪質なデマも振りまきながら、「西成特区構想によって、維新だけがはじめて変えた」。

しかしそれも嘘。

あいりん地域の問題については、維新が現れるはるか前から、「柳本一家」の歴代議員はもちろん、自民党・公明党・共産党・旧民主党の他の歴代議員も含めて議会質問で機会あるごとにとりあげ、また地域住民の取り組みとも連携しながら、地道に改善を図ってきた。

維新の支持者は、「あいりん地域がああいう状態になったのは、柳本一家の長年の西成区支配が原因」「従来は何もしていなかった。維新になってはじめて...

例えば、萩之茶屋地域の違法屋台の撤去は、柳本顕市議(当時)の2008年の議会質問をはじめ、各政党・会派の現地視察なども加わり、平松市政下の2009年に実現した。

維新だけが変えたというのは事実に反する。「西成特区構想」でまともに見える部分は、単に前市政までの成果をそのまま踏襲しただけにすぎない。

むしろ「西成」と過剰かつ異常に騒ぐことで、あいりん地域周辺だけでなく、西成区全域に風評被害が広められることになった。「西成特区構想」では、西成区全域への風評被害の側面の方が大きく、看過できないことになっている。

元々街づくりは、どこの地域でも、「特殊な街だ・特殊な街でなければならない」という偏見でゴチャゴチャ騒ぐものではなく、地元住民が普通に暮らす街として静かに・地道に進められるべきもの。

他の地域では、違法風俗などよからぬものの対策などでも、特別な街だ・特別な街扱いされなければならない、この街はガラが悪い・ガラが悪いことが誇りかのようにデタラメを騒ぐのではなく、地元の生活環境改善として地道に取り組んできたもの。

一方で「西成区」に対しては何をしてもいい、異常に騒いでもいい、地元の人は特殊な街・ガラが悪い街であることを誇りに思っているかのように勝手に決めつけておけばいいかのような、事実に反するようなおかしな風潮があった。あいりん地域周辺を特殊地域として固定化し、しかもそれを「西成」と言い換え、天下茶屋や岸里、玉出、津守なども「行政上西成区に入っている」だけで「西成区だからガラが悪いに決まっている、特殊な街でなければならない」と決めつけられる事自体が、本来ありえない騒ぎ方になる。

あいりん地域の課題については、維新が現れる以前の時代の発想で、「特殊な街ではなく、地域の人が普通に暮らす街」という視点で、地域の街づくりとして地域住民の要求・要望から出発することが重要である。

特区だとゴチャゴチャ騒いで余計な風評を振りまくのではなく、あいりんと地理的に重なる地域でもそうでない地域でも、それぞれの地域ごとに地元の人の思いから出発して、必要な分野に必要な対応をするという視点で取り組むべきである。