「全国学テ結果を教員評価に」という吉村市長の愚

全国学力テストの結果が出たことで、吉村洋文大阪市長が荒ぶっている。

2018年8月2日の記者会見。

吉村いわく、

  • 全国学テの平均点・順位を上げるためには、点数による教員の人事評価だ。
  • 教育委員会事務局を市内4ブロックに分け、各ブロック事務局に実務を割り振る。
  • 市内に市立高校に併設する「特進中学校」をいくつか設置して、いわゆる難関高校入試にも対応できるような高度な授業をおこなう。

その後もツイッターで、同じような内容を繰り返しツイートしている。

そして各方面から激しく突っ込まれる結果に。

文科相、各政党、教職員組合、教育研究団体、現場の教職員、一般の保護者・市民など、各方面から批判が出されている。

「夜回り先生」こと水谷修氏や、「尾木ママ」こと尾木直樹氏といった、教育現場の第一線でも活動してきた著名な教育評論家も、吉村市長の施策はとんでもないことだと厳しく批判している。

愚策としかいいようがない

吉村市長の主張は、「問題外」「現場を知らないアホ」「こんなのどや顔で聞かされる方が恥ずかしいからちょっと黙っといて」「てやんでい、おととい来やがれ」などと一蹴されるべきものである。

現場教職員の実践や教育研究者の研究の積み重ねによって得られて「共通理解・常識」レベルとなっている知見に対して、何の科学的根拠もない「ぼくのかんがえたさいきょうの」的な個人的思いつきだけで根本から否定してぶち壊し、わけのわからないことを押しつけようとすれば、混乱必至である。

そもそもテストとは?

テストは「学力の状況を把握すること」が目的で、平均点や順位という一面的な基準で他地域・他校と競争することではない。

テストの点数を教職員の人事評価につなげると「テストの点数を上げるための対策」と称して、過去問・類題演習ばかりやらせるとか、テストでの不正とか、ろくなことにならないのはわかりきっている。

現行の全国学力テストでも、現にそういう傾向があちこちで報告されて問題になっているが、そういう風潮を加速させることになる。

また成績が振るわない児童生徒へのいじめなども誘発したり、「点数の低い」学校は校区ごと地域差別的な扱いを受ける形になることにもつながりかねない。

「底上げ」こそが重要

行政としては全体的な学力の「底上げ」や、どの学校に行っても一定水準の教育が保障される・安心して学べる条件の整備こそ必要。

しかし維新の教育政策では、一部だけを優遇して全体的なことは放置。その末が「特進中学校」。上位層を伸ばすこと自体は必要に応じて取り組むことまでは否定できないが、まずは全体的な「底上げ」を図らなければ、吉村がこだわるような平均点・順位の向上も見込めないはず。

また学力格差には、家庭の経済格差や貧困などとも一定の相関関係があると指摘されている。点数競争という狭い範囲に矮小化していては、総合的な対策は打ち出せないことになる。

維新の「教育予算○倍」は効果が上がっていないという自爆

さらに、維新は都合のいいときは「教育予算を5倍・7倍・8倍に増やした」と宣伝し、年を追うごとに「○倍」の数字が増えている。しかし、自称「教育予算○倍」は効果が上がっていないということになる。

もっとも、自称「教育予算○倍」は、維新が重点施策として位置づけている分野だけを恣意的に抜き出して計算したもの。一般的な受け取り方ではそれを「デマ」「数字の操作」という。

通常の計算方法で教育費を比較すると、教育予算の総額は維新以前の時代と比較してほぼ横ばい。しかも維新の「重点施策」に予算が振り分けられる煽りを受け、その分通常の経費が圧迫・削減されたということになる。

教育委員会ブロック化も、何それ?

教育委員会を4ブロックに分けて、各ブロックごとに担当するというのも全くの愚策。

いわゆる「大阪都構想」、大阪市の廃止解体がらみでの狙いが透けて見える。

大阪市で、行政区なりさらにその下の小中学校区なりで、学校教育での対応に格差があっては元も子もない。

「大阪市は大きすぎる」「教育委員会が小学校約290校、中学校約130校、高校約20校、計約400校以上を全部見れない」――そんなことはない。教育委員会事務局の中で指導主事や事務局職員らが各学校を見てきている。

大阪府北部地震で吉村の独断での「大阪市立学校は全校一斉休校を決めた」ツイッター一本で、事前のマニュアルや当日の教育委員会の通達で「各学校の状況に応じて判断してください」に沿って判断していた大阪市内の全校を混乱に陥れ、市教委事務局は改めて「一斉休校」の通知を各学校に出して対応を求めたことは、皮肉にも各学校がきちんと教育委員会と連携していることを側面から示したということにもなる。

愚策は止めさせるべき

吉村市長の愚策は、大阪市の児童生徒・教職員に悪影響を与えることになる。

もっと厳密には、橋下時代も含めた維新の施策によって、大阪市の教育現場には不要な混乱と困難が持ち込まれる状態になっているが、混乱と困難がより深刻化するということになる。

これ以上おかしな施策をさせてはいけない。

大阪市会でも、9月以降の議会で徹底的に追及していくことが望まれる。

2019年春の市議選では「維新以外の会派」を大きく増やすこと、また2019年末に任期満了となる大阪市長選挙でもこの流れを変える新市長を誕生させることなど、あらゆる取り組みが必要になってくる。