熊本市議会「のど飴で紛糾」問題の雑感

 熊本市議会で2018年9月28日、「のど飴」をめぐるトラブルが起きた様子。

 新聞報道より引用。

「のどあめ」なめて登壇、懲罰動議に発展 熊本市議会

朝日新聞 2018年9月28日20時54分

 熊本市議会で28日、第3回定例会本会議の質疑で緒方夕佳議員(43)がのどあめを口に含んだまま演壇に立ったとして議員たちが非難し、その対応で本会議が何度も中断した。

 議場での議員の飲食を禁止する明確なルールはないが、市議会会議規則にある「品位の尊重」に触れるとして急きょ懲罰特別委員会を設け、緒方議員への懲罰を陳謝と決めた。しかし緒方議員がこれを拒否したため、再び委員会を開き、さらに重い一定期間の出席停止を科すと決まった。閉会時間が予定より数時間遅れるなどした。

 緒方議員はこの日午前、自らが紹介議員となり市民団体が昨年12月~今年9月に出した七つの請願がこの定例会の委員会で一括して不採択になった際の議論などを確かめようと、約1時間にわたり議会運営委員長に質問していた。議員から「同じことを何度も質問するな」「議事録を読んで」などといらだちの声が上がっていた。その中で、緒方議員があめを口に含んだのを見た議員が指摘し、本人も認めたため、議会は非難の声で混乱。議長判断で「暫時休憩」となった。

 その後、議会運営委員会に呼ばれて謝罪を求められた緒方議員は、せき込んで質問を中断するのを防ぐためだったとして、謝らなかった。そのため、議員から懲罰動議が出た。

 この騒動で、当初午後0時半に終了予定だった議会は時間を延長し、同日午後8時ごろまでずれ込んだ。

 これは、「喉の調子が悪いからのど飴をなめることを認めるかどうか」という問題ではない。それを論ずるために必要な手続きを欠いたまま、独断でルール違反・ないしはグレーゾーン行為をおこなったから批判されているということではないか。

 「体調不良の人間に配慮しない、議会の頭の固い連中」かのように扱ってこの市議を擁護する人間もいるようだが、それは違うと感じる。

 この市議の言い分通り、喉の調子がおかしく(別報道では「咳が止まらない」などの主張も)、質問に支障が出るためにのど飴をなめたいというのなら、これまでの議会のルールでは前例がないグレーソーンだったこともあり、事前に議長に申し出ることや、議長裁量だけでは判断できないなら議会運営委員会に諮ってもらうのが筋だったのではないか。

 その手続きをすっ飛ばして、「喉の調子が悪いからのど飴をなめる」と、それ自体は正面から否定する人はほとんどいない命題に矮小化して、何かおかしなミスリードを図ろうとするのはいかがなものか。

以前の「赤ちゃん連れ議場入場」問題

 この議員については以前にも、「赤ちゃん連れでの議場入場」で騒ぎになっている。

 これも、やむを得ず赤ちゃん連れで来る場合は、ベビーシッターが議員控室で世話することを認めるなどの案が事前に提案されていたものの、この議員がことごとく拒否した上、独断で議場内に赤ちゃんを連れてきて騒ぎになったものだった。

 この問題についても、「子育て中の女性に冷たいのではないか」と擁護し熊本市議会を糾弾する向きがあった。しかし実際にはそれ以前の話で、子育て中の議員を支援する体制を充実させるという一般論としては誰も否定していないし、議会としては必要なルール整備も検討してきたものの、独断で強引なことをするのは議会ルールとしてどうなのかという話でもある。

 トラブルの構図としては、前回の赤ちゃん連れと、今回ののど飴問題は、根元の部分では共通しているような気がする。

問題の核心を見誤ってはならない

 どこの会派にも属さない無所属だから・議員としては若いから・女性だからと、この事件の経過には何の関係もない、この議員がたまたま持っていただけの「属性」を持ち出して、「頭の古い老害ジジイがよってたかって、少数会派の若い女性に差別的ないじめ行為をおこなっている」かのように描いて擁護するなどといった行為が、ネット上などでも見られる。

 しかしこれは、すり替えもいいところではないかと感じる。今回ののど飴の件についても、前回の「赤ちゃん連れ」の件についても、所属や年齢・性別は最初から問題にもなっていない。

 単に、不適切行為を注意されたというだけのことではないか。しかしそれを注意されると、注意すること自体が「女性差別だ」扱いして、問題になった行為を不問にし、被害者面して威嚇するなど、それこそ性差別的ではないか。

 女性属性に限らず、おかしなことを注意されたことに逆上して、その人物や周囲が「たまたま注意された人物がある属性を持っているから、注意の背景にはその属性への差別がある。差別問題の被害者」にすり替えて脅す、解同理論的な「反差別を偽装した差別主義者」というのはよく見られる。1970年代には解同がよくその手で因縁を付けていたし、近年ではフェミニストを自称・偽装する「ツイフェミ」などにもよく見られる手口でもある。

 こういう主張は非論理的であり、またそれらの自称「反差別運動」が対象としている人権問題の解消にも逆行することになる。

 喉の調子が悪いからのど飴をなめる行為そのものを否定しているわけではない。また子育て中の議員に対する支援体制そのものを否定しているわけではない。

 議会ルールにないことやルールの不備などは、「明記されていないから何をしてもいい」と強行するのではなく、議会運営のルールに沿って改正を求めていこうという話ではないか。