橋下思想調査に抗議続出

 橋下徹大阪市長は2月9日付で、市のほぼ全職員(労働組合の存在しない消防局を除く)に対し、組合活動や選挙活動への参加の有無などを問う調査を実施しようとした。これは各界から違憲・違法と指摘され、2月14日の教育委員会会議では異論が続出して教育委員会部局(市立学校)では実施を延期することになった。
 各界からの抗議を紹介する。

大阪弁護士会『大阪市職員に対する労使関係に関するアンケート調査の中止を求める会長声明』(2012/2/14)
▼勤務時間外に参加した正当な政治活動や選挙活動の内容についても回答を強制するものであり、それは、当該職員の支持する政党や政治家、政治に関する関心などの回答を求めることにつながり、職員の思想信条の自由や政治活動の自由を正面から侵害するものである。
▼使用者が正当な組合活動への参加状況を業務命令をもって逐一調査することは、使用者から独立して活動する自由が保障された労働組合の運営に使用者として支配介入するものにほかならず、許されない。

自由法曹団「思想・良心の自由と労働基本権を踏みにじる大阪市職員調査の即時中止を求める声明
▼街頭宣伝に参加したことがあるか、他の職員から投票依頼を受けたことがあるか、その職員は誰か、など、職員個人の内心の自由に属する事項の回答を強要する。これは、思想・良心の自由(憲法19条)を侵害する思想調査そのものである。また、地方公務員も地方公務員法36条等の規制を除き原則として自由に政治活動を行うことができるのであり、職員の正当な政治活動を詮索する行為は、職員の政治活動の自由(憲法21条1項)をも侵害するものである。
▼組合に加入しているか否か、組合に加入することによるメリットがあるか、組合費がどのように使われているか知っているか、など、職員による組合活動の内容を詮索するだけでなく、職員と職員組合との対立を煽る質問事項が設けられている。かかる質問自体、職員組合への支配介入にあたり、職員の団結権・組合活動権(憲法28条)を侵害するものである。
▼同調査が職員の基本的人権を侵害するものであることは明らかであり、職員はこれに回答すべき義務はない。したがってまた、市当局が回答しない職員に対し懲戒処分をすることは許されない。

大阪自治労連「暴挙!橋下大阪市長は憲法違反の思想調査(職員アンケート)を即時中止せよ」(書記長談話)
▼「職員アンケート」は、職員のプライバシーや思想信条の自由(憲法19条)、組合活動の自由(地公法の制限はあるものの)を侵害する明白な違憲行為であり、市長としての職権濫用である。
▼そもそも、「違法ないし不適切と思われる政治活動、組合活動」に問題があれば、当局が調査をし、適切に対処、処分をすればすむことである。
 橋下市長は、大阪市の職員が今どんな気持ちで働いているのか、考えたことがあるのだろうか。職員は市長の奴隷ではない。現代の「踏み絵」ともいえる今回の「職員アンケート」は、「処分」「命令」「免職」という言葉で職員の不安をかりたて、思想・良心の自由を侵害し、人格権を侵害するものである。
 「市長の業務命令」(職務命令・地公法32条)というが、その要件は「職員の職務上に関するものではなく、職務と全然関連のないような私生活に関するものには及ばないし、職員組合の活動への干渉のように行政庁の関与が禁止されている公務員の活動には及ばない」とされている。さらに「重大かつ明白な瑕疵がある場合は、職員は職務命令に従う義務はなく、かつ従ってはならない」とまでされているのである。今回の「職員アンケート」は、市長の職務命令権を逸脱し、濫用したものであり、回答を強制されるようなものではない。

西成医療生協(大阪市西成区)「橋下市長の「組合活動」アンケート調査に抗議します!
公務員であっても勤務時間外の一私人であれば、どのような政治・思想信条を持とうが、それはその個人の自由意志です。行政執行に直接的な権限を持たない一般職員をも対象とする今回の「調査」は思想信条の自由を侵犯するものであり、橋下市長のファッショ的体質を自ら露呈しています。市職員への恐怖政治はやがてわたしたち市民へも向けられるでしょう。
いま橋下市長が市役所内部と市職員に対してやろうとしていることは、彼がこの間掲げてきた大阪都構想、教育基本条例、地下鉄民営化等をゴリ押しするための地ならしです。忘れてならないのは、橋下市長自身が特定党派の人、大阪維新の会の代表であることです。行政機関の政治的独立性、労働組合の政治的中立性を逆手に取り、市行政機関内の自己の反対派を市長権限を使って不当にあぶりだし“粛清”していく。そのことが橋下代表の真のねらいでしょう。かつてA.ヒトラーも政権奪取の途上でナチス内に存在した自分の反対派を暴力的に粛清しました。いまそれを想起したとき、わたしたちは大阪市役所内で起きていること、公務員のことと済まされた問題ではありません。

大阪市外・府外からも、大阪だけの問題ではないとして、抗議が寄せられている。

長崎県労働組合総連合「大阪市職員への違法な「思想調査」に抗議する
▼このアンケートは、その調査を実施するに至った目的とは無関係の設問が多数設けられており、個人を特定し、政治活動のみならず、法に認められた正当な労働組合の活動をも勤務時間外に至るまで調査するもので、人権を侵害する違法な内容になっている。このアンケートを直ちに中止することを求める。
▼私たちは、今回の件を「大阪」という一地域の問題ではなく、日本全体の問題ととらえており、このような思想調査を、自治体の長が命じて行うことを看過することはできない。

愛知県労働組合総連合「【談話】橋下大阪市長の違法な思想調査に抗議する
▼このアンケートは「労使関係に関する」調査を名目にはしているが個人を特定し、政治活動、知人関係を勤務時間外にまで調査するもので、人権を侵害する違法な内容になっている。このようなアンケートは直ちに中止するべきである。
▼橋下市長はこのアンケートを「市長の業務命令」であり「正確な回答がなされない場合には処分の対象となりえ」るとしている。「誘った人」「要請した人」「言われた相手」など「通報窓口に無記名で情報提供」する方法を示しておいて、「自らの違法行為について、真実を報告した場合、懲戒処分の標準的な量定を軽減」するとしている。まるで市長自らを秘密警察の長官とでも思っているかのような独裁ぶりである。
私たちは大阪市においてこのような思想調査が行われることを看過する事はできない。